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日々書き連ねた妄想をさらすとこ。
必ず初めに諸注意をお読み下さい(でないとわけがわからないと思われます)
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STEP 1
CP:アスキラ前提だったはずですが、アスランの出演は遠いです。ほんのりシンキラ
ジャンル:学園物(激しく違う)
設定:キラinアカデミー。運命キャラ中心(主人公はキラですが)ただし死んだはずの方々が時々ふらっと現れるやも(ニコルとかミゲルとかハイネとか)
   キラは偽名を使ってすごしてます(という設定なので読みづらいかもしれません)セラ・イズミ
裏設定:アスランはカガリの護衛でオーブ。キラがどこにいるか知りません。
裏裏設定:実はSPIRALの第二部だったりしますが忘れてください。










 目的地に人の姿をみとめて、シンは眉をひそめた。
 さすがに自分ひとりしか知らないとまでは思っていなかったものの、見つけてからここ数日他の人の姿を見かけたことはなかったので、落胆したというのが正直なところだ。
 わざわざこんな所に来るような物好きがいるとは思わなかったということろか。
 何せ普段過ごしている建物からは随分離れている。
 歩いて往復5分くらいだろうか。
 限りあるフリーの時間を、たかが5分されど5分、潰したいと思う人間はまずいない。
 シンでさえここにくるのに走ってきているというのに。
 人がいるのでは全く意味がない。

 引き返そうとした足がしかしとまったのは、その人物に見覚えがあったからで。


「…………セラ・イズミ?」

 見覚えはあっても良く見知ったというわけではない。
 名前くらいは、という程度の認知度はかれこれもう三ヶ月同じプログラムをこなしている同期に失礼だろうか。
 だが仕方ない。
 全くといっていいほどに接点などないのだから。


 そのシンでさえ知っている風にさらさら揺れる亜麻色の髪と、散々噂になっていた右手薬指の指輪は、確かに彼のものだった。
 それから頭の周りを飛び回っている緑色のロボット鳥も。


 セラ・イズミというのは不思議な人物だった。
 一件常に穏やかに微笑んで害のない雰囲気をかもしだしているくせに、あれやこれやと噂だけはやけに多い。
 いいものから悪いものまで。
 信憑性のあるものからどう考えてもそう思えないものまで。
 事実だけを見たときシンに浮かんだ感想は、とりあえず、極端、なのだが。
 出来ることと出来ないことの差が激しすぎる。
 2位と天と地ほどの差をつけ、ひきはなしてトップとなるか。
 あるいは地を這うか。
 お前はやる気があるのかと言いたくなる。
 やりたいことだけをやっているような、でなければそんなあからさまな結果がでるはずがないとシンは信じている。
 そりゃあ人間であれば苦手なことの1つや2つあるはずで、それはコーディネーターであっても確かに当てはまることなのだけれど、それでも得意以外は全部苦手というのはありえない。
 しかも何位をとっても――1位でも最下位でも――彼は同じ顔で微笑むだけだ。
 眼中にもない人間だと言ってもいい。
 しかし同時に気に食わない人物でもあった。
 それがどれだけその存在を意識したものかを知らず、シンは悪態をつく。

 なんて運が悪いのだろう、と。


 頭の上で首を傾げる緑の小鳥がどんなに可愛かろうと、その光景が戦いを生業とするだろう者にどれだけ似合わなかろうが、どれほどのどかだろうが、和もうがなんだろうが、次にシンがとる行動はすでに決まっている。

 帰るのだ。


 用のある人物でもなければ関わりたい人物でもない。
 本人をよく知らず噂だけで判断するのもどうかと思ったが、なんとなく感じるいけ好かなさもありシンは彼を軽蔑していた。
 何のためにアカデミーに入ったのか。
 努力をせず、流されるように生きる。
 目的をもたず。

 シンには守りたいものがあった。
 それを失う恐怖を悲しみを喪失感を、知った。
 譲れない思いがある。
 だからここにいる。


 ――――では彼は?




 日々努力に努力を重ねているシンにとってセラのその姿は反感を買うものでしかない。

 だのに、だ。
 立ちあろうとした丁度その時、セラがふと顔をあげた。
 必然的に目が合い、ゆるりとセラがいつもの笑みを見せた――いや、シンに向けられたのははじめてだ。
 一瞬どくりと心臓が鳴り、シンは望まず彼が常に噂の的となる理由を知ったのだ。
 整った顔なぞそこら辺にうようよといる。
 しかし彼は、セラはそれだけではなかった。
 一見全てを受け入れる寛容さの奥深くに見え隠れする何者もよせつけない潔白さ、それと同伴する一種の艶かしさ。
 矛盾するより他ないいくつもの何かが、何故か何のゆがみもみせずに彼という器の中に納まってしまっていた。


 気まずい沈黙。
 実際には1秒だか2秒だかしれないそれは、やけに長く感じた。
 先に我慢できなくなったのは当然の如くシンのほうだった。

 なんでこんなところにあるのかいまいち用途の不明な大きな木の下、しかしこの時間は影とならない位置にあるベンチに座るセラに「何してんだよ」と何してるも何も、みればわかることがシンの口をついてでた。
 少なくともシンならば「みればわかるだろ」と冷たく返すところだ。
 だからこそ実際にその場面を創造いて気分が悪くなった。


 が、セラはやはりいつもの微笑みを浮かべて首をかしげた。
「考え事?」
 ふざけているのか。
 手にしている本は一体なんだというのだ。
 それから軽く頷いて、
「ああ、ここ使うの?」
 勝手に納得された。

「別に」
 そっけなく言うが彼は気にしない。
「ごめんね。今日は使わないのかなって思ったから。どーぞ。かわるよ」
 別に……。

 別に俺の場所ってわけでもないし。
 あんたが先に使ってたんだから譲られる理由もないし。
 あんたみたいに理由があって使ってたわけでもないし。
 だいたいあんたがいるんだったらこんなところ使おうとか思わないし。

 渦巻く思いは子供みたいでさすがに口には出せなかった。
 いや、言おうとしてしまって、でも気がついた。

「今日は……って」

 まるでシンがこの場に通っているのを知っているかのような口ぶりではないか。
 知られてまずいことはしていない。
 セラも責めてるわけでもからかっているわけでもなく。
 なのに不快感がこみあげてくるのは一方的に知られていたということに対してか。
 それとも彼だからか。
 あるいは――。


「最近よくきてるよね」
「それが? 何か悪いわけ」
「悪い? どうして?」

 シンの突っかかるような物言いにセラは穏やかに返す。
 そこで自分がどれだけ幼いことをしているかを悟ってもいいはずなのに、シンはただのらりくらりとかわされることにいらだっただけだった。

「ってゆーか、何であんたがそれ知ってるんだよ」
「ああ、あのね。あそこ」

 そういって示すのは初日に案内されて依頼一度も踏み入れたことのない建物で、今日もなかったシンは何があったのかまるで思い出せなかった――思い出すも何ももともと覚えていない可能性も高い。

「あそこから見えたんだ」
「あそこって……」
「うん。資料室」

「なんの用だよ、そんなとこに」

 ついつい突っ込んで聞いてしまう。
 自分から会話をしていることにすぐに気がついた。
 何故だろう。
 のせられてる感が否めない。
| SEED(アスキラ) | 16:21 | comments(5) | trackbacks(0) |
ω -omega-
CP:今のところなし。気が触れたら男女に転がる可能性も。(アスキラ前提)
時代背景:種無印終了直後。
諸注意:何がどう転がるかまるっきり決まってませんが、書きたくなったので書きます。オリキャラ出演注意。名前の変換はできませんがCP小説というよりは見方によってはドリームに近いかもしれません。







 戦争が始まった。
 それは数年前。
 戦争が終わった。
 それは数日前。

 終わりだけが随分とはっきりしていると思った覚えはある。
 少し考えた。
 まさかそんなわけがない。
 きっとまだ、終わってない。
 終わっていないのだ。
 あんなあやふやに始まったものが、こんなにはっきり終わるはずがない。
 戦争の始まりとされてる日より、ずっと前から戦争は始まっていた。
 尊敬が畏怖と拒絶へと変わったとき。
 どこだかわからないその一瞬から始まったもの。
 だから。
 まだ戦争は続くだろう。
 



 薄れて消えて、何もなくなってしまうまで。


 もともと何もないところから始まったそれは、何もない、無に返るしかないのだ。
 はやく終わってしまえと呟いた声に賛同するものは、意外と多かったらしい。














 レイア・カーペンターは自分の名前を気に入っていた。
 少なくとも、名前は。
 つまり、ファーストネーム。
 ファミリーネームのほうはと言えば、さっさと結婚してしまおうと子供の頃から何度決意してきたか知らない。
 大工だなんてナンセンス。
 どちらかというと彼女は壊すほうが好きだった。
 理由は至極シンプルで、簡単だからだ。
 積み上げるのは難しい。
 そして何より、怯えなきゃいけない。
 それが壊れていく日を思って。
 それを壊される日を思って。
 一生懸命積み重ねてきたものを何の前触れもなく壊されて始めてそれを悟った。
 悟ると共に思い知った。
 何もかもが遅すぎた。
 過去には手をだせない。
 後悔先に立たずと古人も言った。
 だから後悔しないように生きるのだと。
 よく考えて。
 慎重に。
 そして彼女もまた選び取った。
 前おきが長くなってしまったが、それはそれこれはこれ。
 もうどうでもいい。
 だって捨ててしまうのだから。
 いらない。
 もういらない。
 必要ない。
 捨ててしまえ。
 全部だ。
 そう、全て。
 ああでも、と戸惑ったのは自分を呼ぶ声が聞こえてしまったから。
 おかしい。
 幻聴だ。
 『レイラ』
 とやわらかく呼ぶ声は、大好きな人の声だった。
 大切な人の声だった。
 今はもうない。

 捨てて、すてて、みんなすてて。
 それでもどうしてだろう。
 その名前だけは捨てられなかった。



 捨てて、すてて、みんなすてて。
 なんでなんだろう。
 なんでまた、拾ってるんだろう。








「名前は?」
 それで、とレイラ――結局やっぱり捨てられなかった――はタオルを放り投げてやりながら、髪からなにからびしょ濡れの『拾い物』に切り出した。
 何を思ったかわからない。
 目の前の彼じゃない、レイラ自身が。
 本当に何をとち狂っているんだか。
 全部全部全部全部捨ててしまって、そして拾って。
 貧乏性なのかもしれない。
 落ちてると拾いたくなる。
 もったいない。
 少なくともそう思わせるほどには、見目良い少年だったのだ。
 柔らかそうな髪がびしょ濡れで頬に張り付いて、絶望だかなんだか――もうこんな時世珍しくはないけれど――秘めた瞳は艶をもってけれど輝き、形の良い唇は弧を描く。
 ただし空虚だ。
 だからこそ惹かれた。

 嘲るような笑みではなく、だからといって微笑むような笑みでもなく、なんとも中途半端に少年――年はレイラと同じくらいだろう――は笑って答えた。

「ない」

 名前は――?



 簡潔な、簡潔すぎて答えからは程遠い一言。
 たった二文字。
 なるほどと思う。
 納得した。
 拾ってしまったわけ。
 惹かれてしまった理由。


 だから紅を刷いた唇で最高に色っぽく笑ってやった。


「あら、同じね」

 もっとも彼は眉一つ動かさなかったけれど。
 おもしろくない。


 まあいいだろう。
 目的はそんなくだらないことなんかじゃないのだから。
 もっと崇高で限りなくくだらなく、この上なく愛しいことだから。



 拾ったんじゃない。
 めぐり合ったのだ。
 だから立場は対等。
 はじめまして。
 愛しい愛しい共犯者。
 私の隣人。



| SEED(アスキラ) | 18:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
その他(DaWn)2
CP:アスラクキラ
ジャンル:家族もの


10/22 NOVELへ移動
| SEED(アスキラ) | 15:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
その他(DaWn)
注意と謝罪。
CP:アスラク、アスキラ、ラクキラ
ジャンル:ってゆーか、DaWnです。要はちったいです。
謝罪:本来ならここにこんな話を書くべきではないのですが。コンセプトから大夫はずれてしまうので。けれど書きたいネタがあるんですが、どうにもワードその他を使って書く気になれないのと、ネタがうまくまとまらないという理由にて、ここでメモさせてください。適当に話になったらこっちを消して、ちゃんとノベルに移します。



10/22 NOVELへ移動
| SEED(アスキラ) | 00:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
stand by it 3
CP:アスキラ
ジャンル:ファンタジー



 もしかしたら面倒な拾い物でもしてしまったかと――いやなりゆきで火を共にしているだけで、明日になればわかれる予定ではいるのだが。なんだか嫌な予感がひしひしとしている――眉をひそめて隣をみやれば、やはり相変わらず微笑ってはいるが、何を考えているのかわからない顔で彼は首を傾げる。
 思わず目をそらしてしまった。
 それはたぶん、一見無邪気に見える彼の目に全てをみすかされてしまうような、そんな錯覚に陥ったからだ。
 どうにもアスランには後ろ暗いところがありすぎる。

 ごまかすかのように荷物をあさり、当然のように保存食を取り出してから、はたと気がついた。
 というかむしろ、何故今まで気付かなかったのか。
 これこそ不自然の極みであるのに。
 やっぱりどこか飲まれてしまっているのが否めない。

 彼は身一つでアスランの前に立っていた――正確には泳いでいたのだが、そんな細かいところは気にすることじゃない。
 荷物の少なさに、いやないと言っていいのだが、不審を感じたのは記憶に新しいが、それでも食料も何もないのはさすがにおかしすぎる――あまりに人間味がないので、食事をするという事実が抜け落ちてしまっていたのか。ところで魔性は食事をするのだろうか。たまに人間を襲って食べたという話を聞かなくもないが、目の前の少年がそんなことをするとはさすがに考えづらい。

 あるいは追いはぎにでもやられたのかとも考えたが。
 それにしてはそんな様子はないように見える。主だった怪我も見あたらなければ、だから困ったという姿勢も見せず。
 つまりのんびりしすぎているのだ。
 そんなことがあったならもう少し警戒心をもつだろう。


 やはり魔性なのではないかと戻りかける思考をふりはらい――ふと思ったが、魔性にしてはしたで害がなさすぎる。そして無防備すぎる。一応今のところと付け加えてはおくが――とりあえずの疑問をぶつけてみることにした。



「お前……」
「うん?」
「食料は?」

 人間ばなれした答えだったら――例えば必要ないだとか――どうしようかとも思ったが。

「現地調達」

 …………どうだろう。
 一応人間離れしていはしなかったものの、また更に言えば一応の筋も通っていたが――色々と言いたいこともあったが、一応。
 いささか不確実ではないかとか。
 保存食を持ち歩いたほうが落ではないかとか。
 どこからとか。
 どうやってとか。


 結論から言えば、疑問が増えたにすぎなかった。

| SEED(アスキラ) | 00:06 | comments(0) | trackbacks(0) |
stand by it 2
CP:アスキラ
ジャンル:ファンタジー
場面:1の続き


 赤々とと萌える薪の中に、ほいと乾いた枝を投げ込めばパチンと音がした。
 それをいように楽しげに見つめる少年は、何の変哲もないそれのどこがそんなにもおもしろいのだろうが。
 そう珍しいものでもないだろうに――先に言っていたことが真実であるのなら。
 魔性かとも思われる少年は素直なものだった。
 誰だと尋ねれば「キラ」だと言った。
 何でもない、ただ「キラ」なのだと。
 何をしていると尋ねれば、水浴びとそんなことは聞かなくてもわかる。
 どうしてこんなところにいるのだと尋ねれば、目的地としてアスランが行く予定の町の名前を挙げた。
 たいした偶然だ。
 この道を通る者はそう多くないと聞くのに。
 そういえば前の町で、ここ数日内に森へ入った者の話は聞かなかったが、一体どこから来たのか。
 それを訊く前に多少の警戒を持ちながら目的を聞けば、少し考えたあとでキラは言った。
 町それ自体が目的ではないと。
 旅を、しているのだと。
 アスランと同じく。
 それを聞いて同じだと笑った彼は、ひどく無防備で、しかしどうにもそうは見えなかったのだが。
 他の不審点も数えだせばキリがない。
 だが特筆すべきはその服装。
 薄くて軽いといえば聞こえは、というか聞こえだけは良いが、何で出来ているのか肌触りの良い上等な布を、ゆったりと複雑な模様を描かせながら巻きつかせていた。
 どのようになっているのか、出来上がってからは想像ができなかった。だいぶ無理がある気も少しするのだが。
 少なくとも丈夫にだけは見えない。
 すぐに破れてしまいそうなそれ。
 おしげもなく太ももよりさらされた――といえばなるほど少し艶かしい感じもするが――白く細い足は、色気よりも何よりも幼さが目立つ。
 幼さと、それから育ちのよさだ。
 それはそこらの村で土にまみれたものではない。
 温室で本でも読みながら形成されたひ弱さに感じられた。
 想像するのは、旅をしているというのなら、腐るほどの従者をつれての、自分の足を使わない旅か。
 しかし彼は今、ここにいる。
 一人で。
 何もかもが不思議すぎて、やはり魔性のものなのだといわれたほうがよっぽど納得できそうだ。
 
| SEED(アスキラ) | 19:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
stand by it 1 (NOVELにおいてある第一回分です)
CP:アスキラ
ジャンル:ファンタジー



 そこは、馬も使えないような、足場の悪い森だった。
 森に足を踏み入れて早数時間。
 すでにアスランは迂回路をとるべきだったかと、今さら考えても遅いことを考えだしていた。
 ただ迂回路をとると10日以上余計にかかってしまうらしい。
 一刻の猶予もない、とは言いすぎだが、それでも決して時間があるとはいえない――本音を言えば、一分でも一秒でも無駄にできる時間はないと、実際がどうであれ、アスランは思っていた――身分だということで、大して悩みもせず森への道を選択したのだが。
 しかし迷ってしまったら意味はない。
 幸運なことにまだ、迷ってはいなかったが。
 けれどいつ迷ってしまうかわからない。
 不安は徐々に大きくなる。
 一人きりで歩いているせいかもしれない。
 一人にはなれていたし、むしろつるむよりも楽だと常々思ってはいたのだが、それでも集団心理というものは無視できない存在らしい。
 もっともここで人数が増え、足が遅くなるというのは最も嫌うべき状況ではある。
 なかなか複雑だ。
 と、文句だけを言っていてもどうしようもない。
 気を取り直してアスランは少しばかり足を速めた。



 どれぐらい歩いただろうか。
 日が沈みかけていた。
 少し早いが今日は、ここまでにしておいたほうがいいだろう。
 急いでいるとはいえ、明日距離を延ばしたいのなら、休息が最も必要なものとなる。
 その考えに傾いたのは水の音が聞こえたからだった。
 実際数十メートル進めば、開けた視界に青が広がった。
 澄んだ青。
 人の手が届かないそこにあるものは、ただただ美しい。
 岸にはテントをはるスペースも十分ある。
 今日の予定は決まった。


―――――ピシャン


 と、魚でも――いやもしかしたら魔物かもしれない――いるのかと音のしたほうに自然目をやれば。

 ―――人魚?

 違う。
 場かなことを考えてしまった。
 だいたい人魚は淡水の生物ではない。
 軽く頭をふって、目を細めればパシャンという軽い音と共に、湖の中央で水しぶきがあがった。
 その合間に細い、…………たぶんあれは腕だ。
 人の。

 ついでその人と思われるそれが顔をあげたことで、予測は確信に変わった。
 ただし。
 何故こんなところに人がいる?
 自分のことはしっかり棚にあげたが、だが街の人間はこの森に入っていく人間などそう数の多いものじゃないと言っていた。
 その上この広さだ。
 同じ時間に同じ場所で人間が二人居合わせるとは。
 何の運命だろうか。

 沈みかけた太陽の最後の光をうけて金色に輝く髪を振り乱し、彼だか彼女だか、とりあえず人間と、アスランは目があった。
 一瞬の邂逅。
 しかし永遠にも近いそれ。
 滅多に目にすることはない、紫の瞳が時間の流れを狂わせた。

――――バッシャンッ

 先ほどと変わらない、なのに何故かとても大きく響いた音で、ようやくアスランは我に返った。
 我に返って、あらためてそれを見た。
 金に見えた髪は実際はブラウンらしい。
 金の美しい髪は賞賛されるものだ。
 だがアスランは別段惜しいとは思わなかった。
 ブラウンの柔らかな色は、むしろその紫の瞳とよくあっていたから。
 目が離せないとは一体何故か。
 何かにとり憑かれたように微動だにしないアスランに、紫の瞳の主は首を傾けて見せた。
 そこまで広くない湖をアスランのほうに泳いでくる。
 足がついたのか少しずつ水の上に現れる肢体は、まぎれもなく男のもの。
 …………自分でもよく見慣れた。
 だというのにどうしてなのか、目を逸らしたいような気恥ずかしい気分に襲われ、同時に、その細く引き締まった女性的でない、かといって男性的でもない躯に目は釘付けとなる。

 彼に羞恥というものはあるのか。
 いや、それ以前に警戒心は。
 何もまとわぬまま、一定のスピードをたもち、ゆっくりとアスランに近づいてくる。
 張り付いた髪をかきあげるそのなんでもない仕草が、やけに扇情的に映った。
 彼は本当に一歩も動けないアスランから、たった一歩分だけを残して止まった。
 すっと伸ばされた手に、人間ではなくやはり魔物だったかと思うがもう手遅れだ。
 もうとっくに、その姿をみた瞬間から囚われてしまっていたのだから。
 濡れた指先が頬に触れる。
 相手は裸。
 常ならば刃をつきつけているはずだった。
 なのに、何故。
 やはり魔物だからか。
 やっかいなことになった。
 本当に魔物ならばとても危ない状況であるのに、アスランの頭に浮かぶものは切羽詰ったそれではない。
 ふんわりと、彼が笑った。


「綺麗な目。森の色かな。違うね、もっともっと綺麗な色」

 彼から紡ぎだされた言葉は、まるで謳のように耳を打つ。

「宝石の色かな。でももっと高価なものだよね」

 アスランのことを認識しているのかいないのか。
 人間と思われているのかいないのか。
 ならば一体何と思われているのか。
 オブジェとでも?

 アスラン本人にまったく注意を払わずに――だいたい少しでも注意を払うのならば、裸で目の前に立ったりしない――独り言を呟き、目を覗き込んでくる。
 深い紫。
 このような色はどこにも見たことがない。
 自然にも。
 贅を尽くした宮殿でも。
 吸い込まれるようにそれを見つめるアスランも、また彼と同じなのかもしれなかったが。


「きれい」

 ため息のように吐き出された。





「お前は、何だ?」
「ああ、しゃべった」
 楽しそうにくすくす笑う彼は、一体アスランをなんだと思っていたのか。
 のちに語ることとなる『綺麗すぎて作り物かと思ったんだ』と。
 ただし質問の答えには全くなっていない。
「君は、何?」
「質問してるのは俺だ」
 答えろ、と常人ならば怯まずにはおれないだろう鋭く睨まれて、彼はしかし笑い続ける。
「魔物か?」
「魔物に見える?」
「魔物には人間に擬態するものもいると聞く。お前は人を魅了しすぎる。魅了し絡みとって引きずりおとす。目的は何だ?」
 警戒しきった言葉に、彼は心底不思議そうにきょとんと無防備な表情をさらした。
「魅了されたのは僕のほうだよ? すごくすごーくきれいな目。あなたは誰? それに、あなたがその腰につけてる剣を一度手に取れば、僕は次の瞬間肉塊となって転がると思うけど」
 熟れた果実を思わせる、瑞々しい赤い唇は、その可憐さに似合わず血なまぐさいことを言う。
 その瞳で動かせないようにしておきながら、よく言うと心の中でアスランは毒づく。
 あるいは全く自覚がないのか。
 そちらのほうがなおのことたちが悪い。
「僕は、キラ。あなたは誰?」
「俺は……」
 言っていいものかと一瞬逡巡する。
 しかし、その真っ直ぐに覗き込んでくる瞳に負けた。
 名前によって支配する、そういうものもいると知っているというのに。
 それでもいいかと、思ってしまった。
「アスラン。アスラン・ザラ。魔物じゃないのか?」
「僕はキラ。それ以外の何者でもない。僕は僕」
 答えになっていない回答に、ため息をついた。
 もともと現実味のともなわない現象に、まともな答えを期待するほうが失礼なのかもしれないと思って。
「とりあえず、服を着ないか?」
「あ、それもそうだね」
 指摘すればくるりと背を向けた。
 恥じらいもなにもないそれに、赤くなっているだろう自分のほうがおかしいのかと、本気で考えはじめたのだが。
 答えはどうにもでそうになかった。もちろん彼――キラから望めるわけもなし。
 そうそうに放り投げた。
 そんなこともあるだろう、と。
 魔物の棲む森ならば。
| SEED(アスキラ) | 19:54 | comments(0) | trackbacks(0) |